「多恵、さよならのキスも無しか?」

不意にそんなことを言われ、一気に視界が滲んだ。



咄嗟に顔を背けて、


「そんなもの――

あるわけないじゃない」


捨てるように吐いて、椅子をガタリと鳴らして立ち上がった。



「ごちそうさま」

口も付けていないアイスコーヒーのお礼を残し、逃げるように足早に店を出た。





≪喧嘩も私から≫