処体験ガール(shotaiken girl)vol.5


「さっさと結婚でもなんでもさせて、厄介払いといきたいんだろ?剣菱のいいなりになる、都合のいいオトコでも見繕っておけば安心だもんな。一人でふらふらさせといたら、いつ誰が花美を持ち上げて、本家の実権握るかわかんねぇからなあ、でもなっ…」


「ちょっと待ちなさい‼︎」


いい終えないうちに、優香が叫んだ。



「どおいうことよ」


「はあ?」


「花美の縁談って、なんのことっ?!」



ダンッ!!


テーブルを叩き割る勢いで手をつくと、いきなり俺の目の前まで迫ってきた。



「答えなさい‼︎どういう事なのっ‼‼」


「なぁんでオレが答えなきゃなんねえんだよっ!!」



ガタンッ!!


テーブルを挟んで、上から押し潰すように睨みかえす。



「見下ろすんじゃないわよっ!!」



「命令してんじゃねえっ!」




つくづく、ムカつくオンナだなっ!



「あ~、クソッ!オンナじゃなかったらとっくに殴ってるっつうの!オレが勢いで殴っちまう前に、さっさ出てこいっ!成久あっ!!」


「あ~、もうわかったから、やめてくれ。お気に入りの店、出禁になるだろ」



面倒くさそうに成久のヤツが階段を上がってくる。

静かな口調の割には、眼が笑ってねぇ。



「縁談の相手は“加賀見隼人(かがみはやと)”。確か、歳は28だったかな。テンポエデナーロ“ってIT企業の社長だよ。俗にいう青年実業家ってやつ」


「……知ってんなら、早く言えよ。成久」


「こんな情報はちょっと調べりゃわかるよ。そうじゃなくて、ほら、優香ちゃん」



そう言いながら、成久が剣菱優香のほうに向きなおる。



「俺と約束したよね。佐々に会せたら“剣菱”の秘密を教えるって」


「……」


「こっちは花美ちゃんの見合い相手の情報まで教えたんだけど?今更、言えませんじゃ、引き下がれない」


「……」



沈黙は、ほんの一瞬。

迷いなど、最初からないかのように、剣菱優香が言葉を紡ぐ。



「剣菱の現当主、剣菱麗華を引きずりおろして、私の母が当主に成り上がる計画を立てている」

「あんたたちは、何を勘違いしてるのか知らないけど、花美は今でも正真正銘“剣菱の跡取姫”よ。あの子が霧里って勝手に名乗ってるだけで、籍だって抜けてやしないし、そもそもそんな事、麗華おばあ様が許すわけないじゃない」