「琴音、遅い」




「ごめんなすー」




「なにそれ。ほら、行くぞ」




玄関で私を待っていてくれるのは、

幼なじみの"沙月 和<サツキ ノドカ>"。




幼稚園から高校までずっと同じで、

しかも驚くことに、高校3年生の今まで

クラスすら離れたことがない、

言わば腐れ縁というやつなのでした。




性別に関係なくここまで仲良くしてくると

恋愛感情なんてものも、湧き出てきません。

中学生の頃、少し意識した

覚えも無くは無いけれど。




そんな和と毎朝一緒に登校するのは

小学校の時から変わっていません。




私は、「いってきます」と

大声でお母さんに告げ、



先に歩いてしまっている和の背中を

大急ぎで追いかけます。