「ーだからっ・・・授業に出なさい!!」
「日数・・・足りているでしょ・・・いいじゃん」
なんでこの先生は私を構うのだろう?
今年初めて入って来たからなぁ
他の教師ならムシしてくれるのに・・・

・・・そういえばこの人外国語の教師だよな・・・。
「--私は壊れているよ。だからバイバイ--」
あえて、ドイツ語で言ってみた。
「--おい!!何言ってんだ!!帰るなよ--」
あぁバイバイって言ったもんね。
「--学校のどっかにいるから・・・まだ帰えらないよ。--」
嘘じゃ無い。
今日は、気分がいいからお気に入りの場所にいようかなって思う。
「--じゃあね--」
そういって私は職員室から出た。

|お気に入りの空き教室|
やっぱりここは落ち着く。
事前に持ち込んであるインスタントコーヒーを作って飲んだ。
「歌でも歌おうかな・・・」
ここの教室はめったに人が来ない。
ていうか知っている人がほとんどいない。
教師でさえ知らない人がいるくらいだ。
もともと別校舎の3階の奥の方で、昔は放送室だったらしいので、音もれの心配は無い。
歌は好きだ。
歌ってる時は何もかも忘れられる。
いつかの誕生日に貰ったギターを手に持って歌いだす。
「♪♪~♪~♪♪~♪♪♪~~♪♪~~」
「やっぱり歌はいいなぁ・・・」
「ハァハァ・・・やっと見つけた。」
あれ?何故?
先生がここに?
「ふふ・・・先生は見つけるのが得意なんだぞ!!」
なるほど。確かにスゴいかも・・・
「先生・・・流石ですね。柴犬先生?」
「その呼び方・・・やめろよ・・・?」
「なんで?柴田健太先生。略して柴犬。いいじゃないですか。」
「・・・お前・・・その呼び方好きか?」
「んー呼びやすいし・・・何より可愛いかな」
まぁこの先生はマジで犬っぽいから似合ってて可愛いんだけど・・・
「そうか・・・」
本人はとても落ち込んでいる様子です。
「だって先生。私が、昔飼ってた犬と似ているもの」
「犬と・・・•同レベル・・・」
あーあ。もっと落ち込んじゃた。
仕方ない・・・。
「~♪~♪♪~~♪♪~♪♪♪~♪~」
なんとなく・・・歌ってみる。
「♪~♪~♪~♪~♪♪♪~~♪♪~」
先生が目を大きくして、ポカーンとしている。
「~~♪♪♪~♪~♪♪~~」
良く見ると先生は泣いている。
良い大人が・・・みっともない。
「矢車!それなんていう曲?」
「あ~これは私が作った歌なんだけど・・・」
「えっっ!?」
なんか面白いほど驚いてる。
「えーと名前は、「雲のち雨」だよ」
「もう一曲歌って!!他のでもいいから」
「??いいよ」
初めてリクエストもらったなぁ・・・
次は恋愛系の歌にしよう。
-ポチッ-
ん?ポチッ?まぁいいか・・・。
「♪~~♪♪♪~♪~♪♪~」

「~♪♪~~♪♪♪~♪♪~~」
-ポチッ-
「・・・・・・•なにをした・・・••」
「・・・いや・・・えっと・・・•」
「歌・・・流したな・・・」
「はい・・・•」
やられた。
今度はどんな噂が流れるんだろう。
まったく。
・・・•先生が怯えてるよ・・・
「もう、いいです。」
「ホント!!!!」
あっ・・・犬だ。
飼い主が怒ってないって分かった犬だ。
やっぱ柴犬だこいつ。
「そのかわり、私と付き合ってください」
「・・・はい?」
「犬みたいで可愛いから付き合ってください」
つまりアレだ。
道連れ。
バレたら先生が捕まるからそれでいいや。
「お前・・・俺のことが好きなの?」
「いえ・・・別に・・・気まぐれ」
「何故俺?」
「--ドイツ語使えるし・・・さっきの罰--」
本当のこと。
5年間ぐらいドイツにいたからドイツ語の方が言いやすい。
「わかりました。香子には逆らいません。」
「よし」
こうして私と先生は付き合い始めた。