コンプレックス*ラヴァー





「……まだ?」



小さく聞こえた声は、くぐもっていて。


おそらく、布団の中から顔を覗かせているに違いない。


やっぱり起きてたんだ?


フッと笑みがこぼれた。



「くるみもやる?」


「えっ?」


「これ。一緒にやれば退屈しないでしょ?」



コントローラーを持ち上げて、ちらっと振り返ってみれば、



「……ゲーム、嫌い。苦手。」



ぶすっと呟いて、再び布団を被ってしまった。


何があったか知らないけど、異様にゲームの類いを嫌がるんだよね。

たぶん、誰かに何か言われたんだろう。


おそらく、“風歩ちゃん”か“修ちゃん”だ。


くるみの話に度々登場する名前。


会ったことはないけど、同じ学校に通う“幼なじみ”らしい。


だから、お互いに遠慮がないみたいで……



最初、自分のことを“私”って呼んでたくるみ。


でも、何度も“くるみ”って言いかけるから、不思議に思って聞いてみたら、


「子供っぽいからやめなさい、って言われたの。」


くるみは言った。



「バカっぽいし…“先輩”は嫌がるよ?って。」