教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~

そして今、先生は都会の夜に黒いベンツを走らせている。


あたしはその助手席に座っていた。


「先生、星を見に行くってどこへですか?まさかプラネタリウム?」


「バカ。本物の星だよ」


別にそんなことでバカって言わなくても。


「先生、いくらなんでもバカはないじゃないですか」


「そうかな?」


「そうです!」


少しばかり力んで言ってみる。


すると先生は笑い出した。


「なんで笑うんですか」


「いや、やっと元気になったと思って」


「はい?」


「お前さっきまで元気なかったからさ」


まさかあたしをいつもの調子に戻すためにこんなことを?


「うへぇ…」


思わず変な感心の仕方をしてしまった。


そのせいで先生に苦笑される始末。


恥ずかしいのであたしは下を向く。


そして気持ちを紛らわせるためにケータイに繋いだイヤホンを耳に入れ、音楽を1人で聴き始めた。


曲名はバッハの『G線上のアリア』。


美しい旋律が心を癒し、恥ずかしさで熱い頬を優しく冷ます。


あまりの心地よさに寝ちゃいそう…。


すると先生の声。


「着いたぞ」


見ると目の前に立派なマンションがあった。


「え、マンション?」


予想外の展開にあたしは間抜けな声を出した。


先生…あなた一体何を企んでいるんですか?!