「わっ…」
わたしはさっと手を差し出して受け取った。
髪飾りはわたしから離れる前と同じ姿で、どこも汚れていないことに安堵する。
アオイくんは木から降りてくると
「よかったね。」
と言ってわたしの頭を撫でた。
「ありがとう、アオイくん。」
「どういたしまして。…それよりユイちゃん、お母さんとはぐれちゃったんだよね?」
はぐれた、とアオイくんは言葉を濁してくれたが、要はわたしは迷子なのだ。
「…忘れてた…」
小さく呟くと彼は、ん?と笑いかける。
わたしは恥ずかしなって俯きながら言った。
「わたし、迷子になってたの、忘れてた…。」
