「ここで、祭りか…」
私は祭りの様子を思い出していた。
そう言えば、私が小さい頃、よく、伯父と叔母とここにきて遊んでいたことがあったっけ。懐かしいな。もう、あれから5年も経ってしまった。あの時、私は、伯父や叔母がいなくなったなんて思わなかった。ううん。思えなかった。人がいなくなるってものすごくさびしい。でも、幼いころはさびしいという感情もまるで、無いかのように…。
――、そう言えば、今何時だろう?バーチャフォンが使えない今、時刻なんて…。
「♪〜」
あれ、どこからか音が聞こえる。これは、もしかして名曲“赤とんぼ”。すっかり聞かなくなった。時代なのかわからないけれど、もう、あの名曲も忘れられてしまったのだろうか?
そんなことを思いながら、子供たちが走っていく姿が私の目の前を横切る。
「暗くなるから帰ろう」
そう言っていた。もしかして、この音は5時の知らせ?