「金里、先上がる」

「ぁ、う、うん……」

悟史くんは、荷物を持ってあたしの方へと早歩きで近づいてくる。

あたしの存在に気づくと、目を丸くした。


「……よっす」

「ぁ、あの……」

「……話、いいか?」

「……うん」


悟史くんは「ちょっくら着替えてくるから、下駄箱で待ってて」と言って、更衣室へと行ってしまった。

あたしは、体育館の方をチラッと見て、下駄箱へと歩いた。



……若葉ちゃん、翼くんの側にいたな。

ドアの隙間から見えた、体育館の中。

若葉ちゃんが、翼くんの側に座っていた。



たぶん……翼くんも、若葉ちゃんの方が、頼りやすい。

こんな、あたしなんかより。



そう思うと、胸がチクンと痛む。