涙目になりそうな時だった。
「いい加減にしろ」
聞いたこともないくらいの低い声が、あたしの耳に届く。
翼、くん……?
翼くんは男の子からあたしの眼鏡を取って、あたしに「ほい」と優しい声で渡してくれた。
「あ、ありがとうっ」
「なに翼キレちゃってんの?」
「やりすぎだっつってんだ」
「眼鏡借りただけじゃーん。……ぁ、なるほど」
男の子は、あたしの目の前に立って、ニコッと子供っぽい笑顔をみせた。
「俺、岡田敦! 城智学園2年生の、バスケ部のエースフォワード! お名前は?」
「ぁ、えと……矢野、舞……です」
「舞チャンね。覚えとこ」
「敦っ!! 舞に何かしたら許さないから!!」
若葉ちゃんがそう言うと、岡田敦くんは、フッと笑った。