「んー、まーね。中2から。中1でバスケできなくなっちゃったし」

「じゃあ、走るの得意なんだ」

「普通。ザ・普通! 入賞って言っても、その時出てた人たちが1年生だっただけ」

「でも、すごいっ!」

「へへーっ!」

照れくさそうに笑う若葉ちゃんの周りには、さっきの黒いオーラはなくなった。

「ごめん、ちょっと電話するねー」

「ぁ、うん」

若葉ちゃんは、馴れた手つきでボタンを押して、ケータイを耳にあてる。

「ぁ、木田先生ですか? 金里です。すみません、今日の筋トレ悟史は倍でお願いします」

そう言って、若葉ちゃんはケータイを閉じた。

「よかったね悟史、木田先生、快くオーケーしてくれたから」

ニッコリと笑う若葉ちゃんとは逆に、悟史くんは顔を真っ青にして口を開けている。

「ごめんなさいっ!!! 調子乗りましたっ!! 許してください金里様!!」

「悟史、知ってる? 謝って済むんなら、警察はいらないの」

冷たく返す若葉ちゃんと悟史くんとの2人の光景を見て、あたしは小さく苦笑い。

他のみんなはケラケラと笑っていた。