ローファーに履き替え、いつもの帰り道を全力疾走。
ちょっと先に、悟史くんと話している若葉ちゃんが見える。
話が終わったのか、お互い手を振って反対方向へと歩く。
あたしは、若葉ちゃんが行った道を走った。
そして、若葉ちゃんとの距離が5mぐらいになったとき、あたしは今まで出したことのないくらい大きな声で、若葉ちゃんの名前を呼んだ。
「若葉ちゃんっ!!!」
「ま、舞っ?! ど、どーしたのっ?!」
「コンクール、まだ間に合う、かなっ?!」
息が整わなくて、途切れ途切れに話す。
「応募、したいんだっ、応募用紙、もら、えるっ?」
若葉ちゃんは優しく笑って、ゆっくりと頷いた。
「うん、ヘーキ。明日、もってくるね」
「あ、ありがとうっ!!」
「……もう、迷っちゃダメだよ」
「……うんっ」
「んじゃ、ばいばーい!」
「う、うんっ! ばいばいっ!」
手を振って、あたしは駅へと歩く。
「……やっぱ、羨ましいよ」
若葉ちゃんが、そう小さく呟いたのを知らずに。