「俺の夢は、NBAプレーヤー」


日向くんは突然、そう言った。

手に持っていたバスケットボールを人差し指の上でまわしている。


「バスケット選手になること。……んでも、この夢は不可能に近い。理由、わかるか?」

あたしは、首を横に振る。


「……身長が低いから」


あ……。

『“身長”っていう、バスケに一番必要な才能がない』


「いくらドリブルが世界一でも、身長は努力じゃ伸びねーんだ。
俺よりドリブルが下手な奴でも、身長が190cmだったら、NBAプレーヤーになることだってある。そんだけ、バスケじゃ身長が大切なんだ」

ボールをあたしの方へと優しく投げて来て、あたしはそれをかろうじてキャッチ。

「それでも、俺は夢を諦めない」


真っすぐで、揺るがない瞳が、あたしの瞳を捕まえる。