「おっ、それ初めて見た絵っ! 新作っ?」
「う、うんっ! この前、描き始めて……」
「完成したら教えてっ! いーんちょーの絵は、俺が一番に見るからっ!」
ニッと優しく笑う翼くんは、机の上に大の字に寝転がった。
「ぶ、部活は?」
「んー今休憩中っ!」
「そ、そっか……」
「……なぁ、舞」
「な、なにっ?」
「……あんさ、答えたくなかったらいいんだけど……。
なんで、去年の金里のコンクールに絵出さなかったの?」
え……?
「だってさ、部活ない日にも絵描きにくるくらい、描くの好きなんだろ? そんな奴が、毎年だしてたコンクールに出さねーわけねーじゃん」
翼くんの言葉に、小さな記憶が蘇った。
『いたっ……』
『舞っ!!』
『お父さん……っ、あたしの手……もう、絵、描けないの……っ?』
『……』
あたしは、自分の右手首をギュッと握る。