日向くんは一瞬目を丸くしたけど、すぐに、いつものように笑ってみせた。
「おぅっ! サンキュ」
前みたいに、ポンポンとあたしの頭を優しく撫でて、出口の方へと歩いて行った。
知ってるから。
『舞、ほら、新しいスケッチブックだ』
『まだ、前のやついっぱいあるよ?』
『それが終わったらこれを使え』
『そんな早く使い終わんないー』
『舞、絵はなたくさん描くんだ。たくさん描かないともってる才能だって生かされない』
『いっぱい?』
『そうだ、いっぱいだ。たくさん描いて、努力した人が、
“1番”になれるんだ』
努力が必ず、“未来”に繋がってることを。
見たら、初心者のあたしでもわかった。
彼が、一番努力してきたんだ、って。