誰も、何も言わなかった。
ただ、翼くんの涙を見てることしかできなくて。
翼くんの涙に、若葉ちゃんが、泣き崩れる。
悟史くんも、壁に寄りかかって、上を向いて静かに肩を振るわせていて。
敦くんは、側の椅子に座って、拳を振るわせていた。
……あたしは、ただ、
ボロボロと涙をこぼしていた。
目の前が、真っ暗になる。
「なぁ……ッ、もってきてくれんなら、もってきてくれよっ。
“一生バスケができる足”ってやつを……ッ」
結局、あたしは……
彼が望んだものすら、もってきてあげられない。
あたしは、翼くんに何もしてあげられないんだ。