「……いーんちょうは、絵、上手だよ」
「……そんなことない」
「……才能あるやつとないやつ、どっちがすげぇと思う?」
「それは……ある人、じゃないの?」
「うん、俺もそう思うっ」
日向くんは苦笑いして、そう言った。
「才能ある奴って、いわゆる“天才”って呼ばれてるだろ?」
「うん」
「バスケにおいて、“才能”の差が目立つスポーツは俺の知る限りない。だから、誰もが“天才”ってのに憧れるんだ」
切なそうに、空を見ながら話す。
そして、真っすぐな目で、あたしを見て言ったんだ。
「でも、俺は絶対憧れなんかにしない」
力強くて、はっきりとした目でそう言った。

