翼くんは、あたしをまん丸の目で見る。
そして、すぐに優しく笑って言った。
「俺も好きだよっ!」
観客がざわめく。
ヒューヒューなんて声も聞こえたり、口笛が聞こえたり。
でも、そんな音よりも、
あたしの頭の中で繰り返される、翼くんの言葉。
あたしは、思わず、ペタリとそこにしゃがみ込んだ。
1つ、2つと強くドリブルをつく音が聞こえる。
次に聞こえたのは、観客の大歓声。
《ブーーーーーーー》
そして、試合終了のブザー音。
「すっげー……勝っちまったよ、東丘」
誰かが、そう言った。
その言葉を聞いてあたしは、立ち上がって走り出す。

