高山くんはフッと笑って、手を離す。
「んじゃ、俺はこれで。
ぁ、翼先輩、俺これ以上先輩の陰役やるつもりないんで。
……予選終わったら、遠慮しませんから」
高山くんはそう言って、階段を降りていった。
あたしには、その言葉の意味は全然わかんなくて。
……それよりも、今、翼くんに会えたことがすごい嬉しい。
翼くんは「はぁ」とため息をついて、階段を上ってくる。
そして、あたしの前に立てば、あたしの頭を優しく撫でた。
「ほんと、余裕ぶっこいてらんねーよなぁ」
「??」
「……舞、3分だけ、許して」
「え……っ?」
あたしが目を丸くした瞬間、あたしの体に、翼くんの体温が伝わる。
ギュッと、背中には翼くんの大きな腕。
そして、目の前には、翼くんの胸板。
あたし、翼くんに……だき、しめられてる??