昇降口でローファーに履き替えようとすると、担任に呼び止められる。
「おい、矢野。ちょっと消灯手伝ってくれないか」
「え、はい……」
「体育館の方を見てきれくれ」
え……。
「あ、あの先生っ」
「んじゃ、頼むぞー」
担任の言葉に、あたしはため息をついた。
そしてあまり気が乗らないまま、ゆっくりと体育館へと歩く。
……どうしよう。
でも、いないよね……たぶん。
バスケ部のみんな、きっともう帰ってるし。
体育館に近づくと、ボールが体育館の床につく音が耳に入る。
いない、よね……。
だって、もうすぐ最終下刻時刻だもん。
……お願い、いないで。
体育館を覗けば、
汗だくになって、スリーポイントラインからシュートを打っている翼くんの姿。

