「じゃあ、あたしも1つ」と言って、真っすぐな目であたしを見る。
「絵、もう描かないの?」
心臓が、ドクンと、波を打った。
「聞いたことがあるの。中三で、事故に遭った子がいる。その子は絵がすごい上手でコンクールで何度も入賞してた子。……もしかして、矢野さんがその子?」
「……はい」
「……そっか。だから、去年出さなかったんだ」
「描いたんです。出そうと思って」
何度も、何度も。
違う絵を、たくさん描いた。
「だけど……どれも、自分が描いたように、思えなかった」
前の絵と比べれば、本当に同じ人が描いたのかな、って思ってしまう。
それほど……変わってしまったんだ、あたしの絵は。
「たった1つの怪我で、こんなにも悪くなってしまうんだって思いました。自分に、才能がないことを、思い知らされたんです」
怪我をしても、上手いと言われる画家さんはたくさんいる。
でも、あたしの絵は、そんな絵じゃなかった。

