あたしの足は、自然と、建物の奥の裏へと動いていた。 ……あと、この角を曲がるだけ。 一歩踏み出そうとすると、震えた声が、聞こえた。 「っくしょー……ッ」 胸が、ズキンと痛む。 あたしは、踏み出そうとした足を引っ込める。 届かなかった。 いくら練習をしてきても、届かなかった。 慰めようと抱きしめようとした、この手も。 ううん……届くどころか、まだ、 伝えてもいなかったんだ。 あたしの、本当の想いすら。