「これ8分ゲームだから、終わったらこれ、翼に渡してあげて」

「ぁ、はい……」

「なにか、質問はある?」

「えっと……金里さんは、しないんですか? バスケ」

そう聞くと、金里さんは目を丸くして、苦笑い。

「しないよっ。だって、できないからさっ!」

できない……?

「故障。バスケにはよくあることなんだけど、あたしの場合、肩のね。左肩が、肩より上に上がんなくなっちゃって。シュートもできない、ディフェンスもできない。だから、少しでもバスケに関わりたいと思って、男バスのマネージャー。女子は弱くて人数も少ないから、入りにくくてっ」

じゃあ……

「諦めちゃったんですか?」

バスケットを。

バスケをし続けることを。

「……そうだね。もう、しないかな。でも、諦めたわけでもない。逃げたわけでも。だって、今、あたしは選手の次にバスケに近い存在だから」


金里さんは、そう優しく笑った。