翼くんは、あたしの手を掴み、走り出す。

「金里に、ちょっと抜けるって伝えといて」

高山くんにそう言って、あたしの手を引っ張る。



だめ、だよ……。

翼くん、そんなこと言われたら、



誤解する。


期待、しちゃうよ。



ついた場所は、誰もいない美術室。

部員のみんなは帰っていて、あたしのバックだけが置いてあった。


美術室に入って、翼くんはドアを閉めてグイッとあたしの手を引っ張る。

翼くんの後ろにはドア、そして、あたしの目の前には、翼くんの胸板があって。


心臓の音が、加速する。