「ねぇ、名前聞いてもいい?」
「え、えっと……矢野です」
「やの……。もしかしてさ、矢野舞サン?」
「? はい……」
小さく返事をすると、目の前の女の子は目をキラキラ輝かせて、いきなりあたしの手を握った。
「あたし、あなたの大っファンなのっ!!」
「……へっ?」
思わず、間抜けな声が出てしまった。
日向くんも驚いてるようで、目を丸くしている。
「あたし、金里若葉!」
金里……もしかして。
「あ、あのっ、もしかしてコンテストの」
「そうっ!! 何度も、応募してくれてるよねっ?」
う、嘘……。
“金里芸術コンクール”
毎年やっていて、毎年あたしが必ず応募しているコンクールだ。

