「席、この辺でいいよねー」
若葉ちゃんがそう言って、前から座って行く。
席はちょうど二列で収まって、あたしは一番端っこ。
そして、隣は、翼くん。
席に座って、手は離れちゃったけど……隣になれたことが、すごい嬉しかった。
「第一試合はっと……福島県と広島県だ」
「福島かぁ……。どっか強いとこあるよなぁ、あそこ」
うぅ……バスケの話、やっぱ全然わかんないなぁ。
バスケ部のみんなの話に、一人だけついてけてない。
そんなことを考えてると、第一試合が始まった。
三つの試合が同時に始まって、あたしはどれをみたらいいかわかんなくて、一人キョロキョロしていると、横から「ぷっ」と吹き出した声が聞こえた。
「わ、笑わないでよ……っ」
「いや、ごめんっ。キョロキョロしすぎっ」
翼くんはクスクスと笑って、真ん中のコートを指差した。
「おすすめの試合は、真ん中。さっき話してた福島県と広島県のとこ。福島のチームは超オフェンス型。勢いに乗った時は止めんのが難しい。逆に広島のチームはディフェンス重視だな。いろんなディフェンスをしてくるから、相手を混乱させるんだ」
す、すごいなぁ……。
見てると、そんなこともわかるのかな??
「オフェンスも決して弱いわけでもない。得点源のエースもいるし。舞も見てて飽きないと思う。まぁ、俺が気になってるってのが一番の理由だけどっ」
「あ、ありがとうっ!」
あたしはお礼を言って、試合をジッと見た。
でも、展開が早すぎて、目で追って行くのが精一杯。
翼くんみたいに、何かを考える暇もなくて。