駅までの道のりは、いつもよりずっと短く感じた。
「んじゃな、矢野サン」
「ぇ……」
「?」
「名前……」
「そりゃ、知ってるよっ。クラスのいーんちょーサンだしっ! 矢野舞サン」
日向くんは、ポンポンと、あたしの頭を優しく撫でて、優しく笑ってみせた。
「また明日」
「う、うんっ、バイバイっ」
「ははっ、バイバイ」
日向くんはニッと笑って、出口へと歩いて行った。
……あれ??
『委員長って、電車?』
『んじゃ、一緒か』
もしかして……反対方向だった??
瞳に映る彼の背中に、ドキドキした。
そして、体の中が熱くなるのが、自分でもわかった。