翼くんはニッと笑って、あたしの頭をクシャッと撫でる。
「サンキュ」
そう笑った彼は、いつもの、彼の笑顔で。
周りを笑顔にする、そんな表情だった。
──ガラッ
「舞ちゃん、平気っ?!」
「矢野さん大丈夫?!」
突然保健室のドアが勢い良く開くと、ドアのところには、バスケ部のみんながいた。
みんな、心配してくれたの……?
あぁ……あたし、だめだ。
あたしの瞳から、大粒の涙が溢れ出す。
「ちょっ、ど、どうしたのっ?!」
みんなと一緒じゃないと、だめだ。
お昼……美術室が以前よりずっと寂しく感じた。
だめなんだ……もう、
あの輪の温かさを知ってしまったから。