「……あたしは、右手首を怪我したとき、たくさん泣いたの」
「……」
あたしの言葉に、翼くんは目をまん丸にした。
「描けなくなって、泣いて、泣いて、いっぱい涙を流したんだ。それで、夢を諦めちゃった。
誰にも“諦めるな”って言ってもらえなかったから」
あたしは真っすぐな目で、翼くんに話す。
……この前と、立場が逆だね。
だから、今度は、あたしが彼の背中を押してあげるんだ。
「翼くん、夢を諦めないで」
あの日……あたしが彼に言わないといけなかった言葉は、この言葉だったんだ。
この言葉が、翼くんの背中も押してくれる。

