明日は卒業式。
もう、ここに来ることもなくなる。
菜緒に伝えたいことがたくさんある。
今まで言えなかったことがたくさんある。
今、菜緒が俺のことをどう思っているかはわからない。
それでも、伝えないといけない。

「連!!」

大掃除の時間、俺が外で掃除をサボって考えていると遼が俺の名前を呼んだ。

「最後の最後までサボってんのか??」

そう言いながら遼は近くに転がっていた野球ボールを拾い、手の中でクルクル回していた。

「人のこと言えんのか?」

俺が言うと、うるせぇ!!、と遼はボールを投げてきた。
俺はそれを受け取る。

「何考えてたんだ?」

俺の投げたボールを受け取りながら遼は俺に聞いてきた。

「考えているように見えたか?」

「あぁ。眉間に皺が寄っていたから。」

俺は自然に自分の手を眉間に当てると、遼は笑いながらボールを投げてきた。
俺はそれを受け取り、遼に投げ返そうとしたとき、遼が上を見上げながら手を振っていた。
遼が手を振っている先に目を向けると、教室の窓から菜緒が覗いていた。
手からボールが落ちそうになる。
そのとき、菜緒の手から雑巾が滑り落ちた。
その動作がスローモーションのように感じ、俺は雑巾を目で追った。