「12時には終わると思うから。」

葵は私にそう言い残して教室を出ていった。
葵は明日の卒業式で答辞を読むため、今から練習がある。

下校時間になった教室で私は帰り支度をしていた。
ふっと誰もいなくなった教室を見渡すと机の上に鞄が置いてあった。

連のだ。

私は静かに教室を出て、廊下の窓からソラを見上げた。
見上げたソラは相変わらずキレイだった。
私の足は勝手に屋上までの道を進み出していた。

すると、目線の向こうに連の姿が見えた。
多分、教室にある鞄を取りに教室に向かっているのだろう。
周りには誰もおらず、この廊下には私と連しかいなかった。

連にはたくさん伝えたいことがある。
今まで言えなかったことがたくさんある。
でも、言葉で表現できるだろうか?
私は上手く連に伝えられるだろうか?

そう思っている間に連はだんだん私に近づいてくる。

私は廊下の真ん中で立ちつくしたまま動けなかった。

そして、連が私の横を静かに通り過ぎようとした。