下駄箱で大輔が教室に漫画を忘れたと言った。
しかも、俺の漫画を。
大輔は「すぐ取ってくる」と言って走って教室に向かった。
俺は仕方なしに下駄箱の前にある傘立てに腰を下ろすとガラス扉から見える外を眺めた。

外は薄暗くなっていた。
3月になったのに、相変わらず外は冷たい風が吹いていて、木々を揺らしている。

3月14日が俺たちの卒業式である。
もう、あと1週間ばかりしか時間がなかった。
それでも俺たちは未だに動けずに立ち尽くしたままでいる。

中学校を卒業すると、俺たちはもう会うことはなくなるだろう。
もし、どこかで会ったとしても俺たちはお互いに見てみぬフリをする。
俺も菜緒もきっと…。

『あの頃はこんなこともあったよなぁ。』なんて、普通に思い出にできるほど今の俺たちは器用に生きていけるとは思わない。