☆ソラ☆

「これ。」

俺は菜緒の前に雑巾を差し出した。
菜緒がそれを受け取る。

俺が菜緒の横を通り過ぎようとしたときに菜緒が

「ありがとう…。」

と小さい声で言った。
それが雑巾のことだとわかっていたが、何故か俺の心は嬉しかった。
それを菜緒に気づかれまいと早足で歩いた。




ひと言でいいんだ。

“ありがとう”

このひと言が俺の伝えたかった言葉に変えてくれる。
シンプルだけど大切なものを含んでいる言葉。