人気のない一本道。
唯一の光源である街灯は、頼りなげに点滅を繰り返している。

女はその道を、たった一人で歩いている。
女が足を踏み出すたび、ハイヒールの踵がカツカツと音をたてる。

それに混じって、スニーカーの底が鳴る音も、聞こえていた。


先程からずっと、である。

大通りから逸れ、脇道に入ってから、ずっと。

女が道を曲がれば、足音も追ってくる。
女が歩みを速めれば、足音はその間隔を狭める。

背後をついてまわるその足音の主を振り切ろうとして、女は何度も角を曲がった。
しかし、あまりそちらへ気をとられていたせいで、自身でもここがどこなのか、わからなくなってしまっていた。