化学室は私たちのクラスがある棟から渡り廊下を渡って、階段を上りきった先、廊下の突きあたりにある。
雨が容赦なくグランドに降り注ぎ、大きな水溜りを作っているのが見えた。
ノックをする前の一呼吸。
先生が中にいるなら、もう私がここに立っていることに気付いているはず。
私は思い切ってドアをノックした。
「失礼します。いっき先生?」
何も聞こえなかった。
静寂の中にほこりだけが舞う。
「せんせ?」
私はためらいながら、いつも先生が座っている場所へと足を進める。
灰皿から煙が一筋、まっすぐ天井に上って行くだけで、先生の姿はそこになかった。

