『じゃあ樹、悪いけどよろしくな』
『はいはい』
『じゃあ行ってくるねー』
梨紗は幸にいに手を振って階段を一気に駆け下り、助手席に滑り込んだ。
俺は深呼吸をひとつしてから、運転席のドアを開ける。
そして何故か、いつもよりゆっくりと車を加速させた。
FMからAMに切り替えたラジオからは、数年前流行っていた曲が流れ、梨紗は窓の外を眺めながらそれを口ずさむ。
『いっくんが運転してる』
『は?』
『変な感じ』
それは俺のセリフだ。
まさか梨紗を助手席に乗せる日が来るなんて思ってなかったんだから。
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