保健室を出たら、幸にいがこっちに向かってくるところだった。


『梨紗は?』


『大丈夫。今寝てるから。あとは、よろしく』


それだけ言うのが精一杯だった。

幸にいが保健室の中に入った途端、涙が出た。



これが恋の痛みなら、もう二度と味わいたくなかった。



泣いて、泣いて、泣いて……。
情けないほど泣いて。



俺はこの日、恋の本当の意味がわかった気がした。

そして俺のファーストキスは、『さよなら』の言葉の代わりに彼女に渡した。



最後の最後まで自分勝手な片想いは、こうして幕を閉じた。