それなのに……。


「せんせ?」


カーテンが閉められたいつもの部屋に俺を呼ぶ声が響いた。

その声が彼女のものだって、すぐに気付く。


なあ、声までそっくりとか、ほんと勘弁してくれよ。

古い記憶を辿っていたから、なおさら梨紗に「先生」って呼ばれてるような錯覚を起こす。


先生だってさ、先生。

自嘲気味に笑って、ふぅっと煙を宙に吐き出した。