「俺が好きだった子がよくその服着てたよ。昔、流行った服だから」 『好きな子』と言う先生の言葉が、チクチクと胸に刺さる。 さっきは私を抱きしめたんじゃなくて、この服を着ていた『誰か』を抱きしめたんだ。 私じゃない『誰か』に笑って、囁いて……。 胸が痛かった。 先生は私なんか見ていないんだって、痛いほどわかったから。 私は泣き出しそうな気持ちを必死で押さえ込んで、月を見上げた。 「紗奈……」 呼ばれて視線を動かすと、先生に両肩をつかまれた。 先生の顔がゆっくり近づいてくる。