【短編】きっと

どうして

「大嫌いだよ、君なんて」

どうして

「大嫌いさ、君なんて」

どうして

「もう近寄らないでよ」

どうして

「――聞いてないよ」



どうして


――それでいいんだよ、小太郎?

「大嫌いだよ、君なんて」

そういいながら涙を流したことも

「大嫌いさ、君なんて」

だらしなく鼻水を垂らした顔も

「もう近寄らないでよ」

そういって私に抱きついたことも

全部全部

「――聞いてないよ」

ごめんね

ごめんね小太郎

私の大嫌いな、たったひとりの――――