『一緒の傘で身を寄せ合ったら、恋人同士って勘違いされるじゃん。あたし、嫌だ』 そうだよ。 これが、平生のあたし。 もう、焦るじゃん――… 「恋人同士?良いねぇー」 『……は?』 反射的に顔を上げると、口元に綺麗な弧を描いた中島がいた。 『……あたし。恋人同士に勘違いされるの、さっき嫌だって……』 「折り畳み傘、折り畳み傘……」 『ちょっ、話そらすな!って、勝手に人の鞄の中に手を突っ込むな!』