「早く行かないと、遅れるぞ?」
相田さんはずるい人だ。
冷静で、平常心を保ってて。
俺だけがこんなに取り乱して格好悪い。
俺だけがこんなに…
「朝から泣くなよ」
と言ってはははと笑っていた。
「だって、だって…」
こんな奇跡、二度とない。
優しく、温かい、あの懐かしい感触。
あの日の記憶が蘇る。
そっと唇が離れると、
「これが欲しかったんだろ?」
とあの笑みを浮かべた。
「今度なんこつ奢ってやるよ」
「ははっ、しょぼいっすね」
「あーじゃあもう何も奢ってやらねー」
と言って、先を歩く相田さんを追いかけた。
確信した。
俺は相田さんの事が本当に好きなんだ。
【end】

