「確か、アメリカの…」
「あぁ。アメリカのイギリス大使館襲撃事件の際にテロリストの殲滅と人質の救出作戦を指揮していたのがユリスだ。結果、死傷者を一人も出さずにテロリストを殲滅し、人質も全員救出した。」

「…それ本当ですか?」
「あぁ。そしてその作戦の後にアメリカ軍人学校で戦闘技術士官として任命された。そしてその四年後、統合軍に戻って来たんだ。」
「…凄いですね…」

「傭兵の頃はもっと凄まじかったぞ。一人で世界のあらゆる紛争地域を渡り歩き、生きながらにして伝説と言われていたからな。」

「…できれば戦場で会いたくはありませんね…」

「全くだ。あれは戦うもんじゃない。」

「…戦ったんですか?」
「あぁ。俺が国連派遣軍として…ユリスが地元の反政府軍の雇った傭兵としてな。」

「そうなんですか…」

「結果として俺とユリスが仲介して紛争は終結…地元の政府が腐敗していた事実が浮き彫りになり、政府を解体して地元住民による新たな政府を設立して事無きを得た。」

「…ユリスさんは、その時国連には戻らなかったんですか?」

「あぁ、ユリスが国連に戻るのはもう少し経ってからだ。」

「そうなんですか…」

「…っと、俺はこっちだ。じゃあな。」

「はい。」

二人は互いに反対の廊下を歩いて行った。

「…そろそろ、『霊帝』に来て貰いたい所だが…難しいだろうな…一応連絡はしてみるか…」

憲蔵は懐から携帯を取り出してどこかに連絡した。

「…もしもし…俺です…」






「…いよいよ、明日か…」

ユリスは自室でパソコンに向かっていた。

「…プログラムも八割方は完成したが…今日は徹夜だな…」

ユリスは溜め息をついてまたキーボードを叩いた。外は、大雨が降り注いでいた。