「心配するな。そうならないために俺達がいる。」

「…あぁ。」

「お前もたまには休暇を取ってはどうだ?身がもたんだろう。」

「そうだな。今回の作戦が終わったら考えよう。」

「そうか。無理はするなよ。じゃあな。」

「あぁ。」

それで電話は終わった。ユリスは椅子に背中をもたれた。

「…はぁ…休暇、か…」








その日の夕方、ユリスはビルの地下深くにある慰霊庭園に来た。エレベーターから降りて奥に歩いて行った。手には花束を持っている。一つの大きな墓石の前まで来るとそこには先客がいた。

「やはり来ていたか。」
その声に振り返ったのは…

「…憲蔵…」

見ると墓石にはもう小さな花束が置かれている。憲蔵が置いたのだろう。

「今日は終戦記念日だからな。丁度時間も開いたから来た。」

「そうか。」

そこにまた誰かがやって来た気配がした。振り返るとそこには二人と同じ花束を持った崇史とグレンがいた。

「やはり、もういらしてましたか。」

「あぁ。そっちは今からか?」

「あぁ。こればかりは無視できないからな。仕方ねぇだろ。」

そういうグレンも手にはしっかりと花束を握っている。

「お前も素直じゃないな。」

「…ふん。言ってろ。」
「まぁまぁ。」

崇史がグレンをなだめて墓石の前に花束を置いた。二人とユリスは一緒に手を合わせた。墓石には文字が彫られている。

「…あれから、もう二十年になるのか…」

憲蔵はタバコに火を点けながら呟いた。タバコの煙を吐きながら上を見上げた。

「…多くの仲間が散ったな…」

「…あぁ…」

そう応えるユリスの顔も少し暗かった。隣りでグレンがタバコに火を点けて静かに煙を吐いた。

「…懐かしいな…」

「…そうですね…」

「…昔は守るということを理解していなかったが、今は違う。」