勇翔達が京介の家に着いた頃、国連では作戦に向けて慌ただしくなっていた。

「…陣形はこのままで、プログラムを組んでくれ。それとシミュレーションプログラムも、あらゆる状況を想定して組んでおいてくれ。」

ユリスは手にした書類にサインをして返した。受け取った部下は書類を受け取って部屋を出て行った。

「…いよいよ、か…」

その時、机の上の電話が鳴った。

「はい。」

「忙しいようだな、ユリス。」

その声は憲蔵だった。
「そうだな。AI艦隊の行動プログラムも構築しなければならないし、部下の艦隊の訓練も行わなくてはならないからな。目が回るようだ。」

「ふ、そうか。」

「お前はどうなんだ?」
「今は団員達の訓練に時間を割いている。今回の作戦ではお前の部隊が主役だ。俺達は事後処理が主になるだろうしな。」

「まぁ、そうなるかも知れんな。」

「お前のプログラミング技術は抜きん出ているからな。ガリスも舌を巻いていた。」

「…あいつに褒められてもな…」

「…まぁ、同感だな。」
「グレンは今回の作戦には参加しないのだったな。」

「あぁ。あいつは日本に行かなくてはならないからな。部下共々日本語を勉強しているんだろう。」

「大丈夫なのか?」

「グレンは元々第4ラボの室長だったからな。心配する必要は無いだろう。」

「そうか…そういえば、彼はいいのか?」

「彼?」

「彼だよ…お前が連れていたあの…」

「あぁ、勇翔か?」

「そうだ、勇翔だ。彼は参加させなくていいのか?」

「あいつには今回の作戦は重すぎる。さすがに今回ばかりは無理だな。」

「それもそうだな。しかし、彼は似ているな…昔の大隊長に…」

ユリスがそう呟くと憲蔵は黙ってしまった。
「…そうだな。」

「…彼は、大隊長と同じ道を辿らねばいいが…」