「…俺達ももう寝るか。」

「そ、そうですね。」

「母様、ご馳走さま。」
「はい。お粗末様でした。三人とも、頑張りなさい。」

「はい。」

「ありがとうございます。」

「おやすみなさい。」

四人はそれぞれの部屋に戻って行った。勇翔は着替えていつの間にか敷かれていた布団に入った。

「大丈夫なの?勇翔。」
勇翔に話し掛けたのはケルンだ。

「うーん、どうかな…ケルンは、どう思う?」

「…多分、三人がかりでも勝てないと思うよ。」

「…そんなに強いの?」
「うん。私も昔の炎皇を見たことあるけど、本当に強かったよ。憲蔵が手も足も出なかったもん。」

「憲蔵さんが…」

「そう。だから、今日は早く休むことだね。それくらいしか出来ないだろ?」

「…そうだね。」

勇翔は暖かい太陽の香りがする布団にくるまり、その日は眠りについた。





次の日の朝、勇翔達は中庭に集まった。

「…来ませんね、拾蔵様…」

「もしやまだ寝てるんじゃ…」

京介がそう呟いた時、静かに声が響いた。

「そこまでボケとらんわ。」

それは拾蔵だった。拾蔵は紺色の薄い着物に羽織を着て下駄を履いている。

「…そんな格好でいいんですか?」

「そこまで本気になる必要もあるまい。」

拾蔵は片足を上げて地面を強く踏んだ。すると地面を紅い霊気が波紋の様に走った。

「…っ!?」

「…これだけでも十分じゃ。」

「…これは手強い…全力で行かせて貰います!」

京介は右手を上に突き出した。

「召紋破棄!来れオーディン!」

「召紋破棄!来れアマテラス!」

「召紋破棄!来れバロン!」

三人が一斉に声をあげると、空から稲妻が落ちた。三人はそれぞれの聖霊を降霊させた。
「召紋破棄…なるほど。いくらかは出来るようじゃな。」

拾蔵は右手を肩と同じ高さまで上げた。