男はせっせと何かを移動させている。そこな憲蔵の冷静なツッコミが入った。

｢ならん。｣

｢…くく…その態度は変わらないねぇ…それで、何のご用かな…？わざわざ君からやってくるだなんて、よほどのことなんだろうね…？｣

｢…はぁ…勇翔。こいつが、国連統合軍第３ラボ室長、ガリス・ベイガーだ。｣

｢あ、坂原勇翔です。｣
｢…ふふ、怯えているのかい…？可愛いねぇ…｣

ガリスは不気味な笑みを浮かべている。

｢…ひ…!？｣

勇翔は寒気を感じた。
｢くく…いや、君の様な反応は久し振りでねェ…ついからかってしまった…坂原勇翔君。名前は聞いているよ。坂原勇翔、十七歳、ＡＢ型、八月七日生まれの獅子座、好物は米類、嫌いな物はナン…日本人だねェ…そして、あの方の息子…｣

ガリスはスラスラと勇翔の個人情報を並べていく。

｢な、なんで…そんなことまで…｣

｢興味のある人間は徹底的に調べたくてねェ…君のことも調べさせて貰ったよ…｣

｢…ッ…!？｣

…この人は…危ない…
そう思った勇翔は雷を掌に集めた。

｢止せ、勇翔。｣

しかしそれを憲蔵が止めた。

｢そんな!？だってこの人は…!？｣

｢こいつも元帥を名乗る一人なんだぞ。｣

｢…!？｣

｢…今のお前では敵わない…それは分かってるだろう…｣

｢…ッ!｣

勇翔は憲蔵の手を振り払った。うつむいた勇翔はただ自分の拳を握り締めるしか出来なかった。憲蔵はケイタイを取り出してどこかにかけた。

｢…崇史か？俺だ…あぁ。第３ラボまで来てくれ…あぁ、そうだ。頼むぞ…勇翔。外に出ててろ。｣

勇翔は何も言わずにラボの外に出て行った。
｢…相変わらずだな…｣
｢…そうですかねェ…しかし、まさかあそこまで怒ってしまうとはねェ…やはり面白いですねェ、彼は…｣