魔天戦史

「そういうお前こそ、十年前から変わっていないがな。」

「…そうだな…」

それきり誰も喋らなくなってしまった。ヘリの中には重い沈黙か流れた。しばらくするとヘリは国連の本部に着いた。ヘリは屋上のヘリポートに着陸した。ヘリから降りた三人を迎えたのは崇史だった。

「ご苦労様でした、憲蔵様。首尾はいかがでしたか?」

「あぁ。まぁ、五分五分だな。」

「そうですか…」

「まぁ、仕方ないな。賢人は他の十賢のもとを尋ねるそうだ。ガリスは今研究室か?」

「ガリス様ですか…はい、多分そうだと思います。」

「そうか。大元帥様には後で報告するからもう戻っていいぞ。」

「分かりました。ユリス様はいかがいたしますか?」

「私も戻ろう。艦隊の訓練もしなければならないからな。」

「そうですか。」

「迎えを頼んで悪かったな。助かった。」

「あぁ。ではな。」

ユリスはヘリポートから去っていった。

「では、私もこれで。勇翔君はどうしますか?」

「あぁ。勇翔も連れて行く。」

「そうですか。それでは…またね、勇翔君。早く慣れるように祈ってるよ。」

「はい。」

崇史もヘリポートから去っていった。

「…じゃあ、行くか。」
二人はヘリポートから中に入った。エレベーターや階段を上り下りして着いた部屋には『第3研究室』のプレートが張ってあった。憲蔵はノックもせずに中に入った。中はいたるところに試験管やフラスコが乱雑に転がり、壁にはあらゆる本が並んでいる。その奥の机に一人の人影が座っている。髪は肩まで伸びた白髪で、白衣のようなものを着ている。男は憲蔵達が入ったのに気付いたのかゆっくりと振り返った。顔には眼鏡が掛かっていて瞳が全く見えない。

「おや…憲蔵君じゃないか…私の実験台になる決意をしてくれたのだね…?そうなんだね…?では早速…」