「…それでは国連に戻られるのですか?」

アルカディアとパラケルススの話が終わり、外に出ていた勇翔達は中に戻って話を聞いていた。

「いや、まだあそこには戻るつもりはない。」

「では、どうなさるのですか?」

「…儂も、他の十賢に会いに行くつもりじゃ。」

「では、勇翔の訓練は出来ませんか…」

「済まんな。代わりといってはなんじゃが、こいつを連れて行くといい。」

パラケルススはそう言って右手の賢者の石から何かを召喚した。それは傍目にはただの白猫にしか見えないが、尻尾が三本ある。

「…えっと…これは…」
「儂の使い魔じゃよ。儂と共に何千年もの時を生きて来た魔獣じゃ。」

「魔獣…っ!?」

勇翔はそれを聞いて後ずさった。

「魔獣といっても、人に危害を加えたりはせんよ。人の言葉を理解し、魔法も使える。十分訓練の相手にはなるじゃろうて。頼むぞ、ケルン。」

猫は名前を呼ばれて短く「ニャー」と返事した。ケルンと呼ばれた猫は勇翔の足にすり寄った。

「……」

「…どうやら、協力を認めたようじゃな。ケルンは儂と共鳴できる。こちらから指示を出すこともあろうが、何かあれば連絡してくれ。」

「分かりました。しかし、わざわざ押しかけたりして申し訳ありませんでした。」

憲蔵は深く頭を下げた。

「いや、儂も大事な事を失念していた。自分で動かなくては何も変わらない…儂はそれを忘れていたようじゃ。お前達はそれを思い出すきっかけを与えてくれた。礼を言うのは儂の方じゃ。ありがとう。」

パラケルススは勇翔に向かって頭を下げた。
「い、いえ…!?そんな、僕は何も…」

「…では、行きましょう。アルカディア様。」

「あぁ。他の精霊王はそれぞれの役割に戻した。宝珠のこともあるしな。」

「そうですな。それがいいでしょう。」