「…一体、何が…」

仮面の男はアルカディアが現われてから微動だにしない。

「これは、『聖王の瞳』という奇跡だ。」

「聖王の瞳?」

「自分の脳内で想像した光景を相手の瞳を通して相手の脳内に投影する奇跡だ。光を媒体にするため私にしか使えない。」

答えたのはアルカディアだった。その声はどこまでも澄んだ声で、体の芯から震わせる。
「君が、坂原勇翔君だね?」

「は、はい!?」

その声に聞き入っていた勇翔は不意に名を呼ばれて飛び上がった。「何で、僕の名前を…」
「君のことは、国連統合軍の大元帥から聞いている。」

「大元帥様から、ですか?」

「あぁ。」

「それで、一体何用でこちらに…?」

「パラケルスス殿に用があって来た。それで、結光天域に異変を感じたので来てみたんだが…」

その時辺り一帯を強力な霊気が覆った。

「これは…まさか…」

アルカディアとボルトが振り返るとさっきまで死んだような気配がしていた仮面の男の指先が微かに動いた。

「…馬鹿な…!?」

「うおおおおおっ!!」
仮面の男は雄叫びをあげて術を自力で弾いた。

「…油断していたな。まさか光の精霊王自ら戦場に立つとは考えていなかった。」

「…やはり侮れんな。人間という存在は…仕方ない。」

アルカディアは右手を肩の高さまで上げた。
「私が直接相手になろう。」

その右手に光が収縮していく。光は徐々にその姿を剣の姿に変えて行く。それは刃渡りが90センチ程の長剣だった。決して無駄が無い美しい装飾がされている。

「…宝剣、アルカディア…まさか精霊王の宝剣を拝める日が来るとはな。こちらも本気で行かせて貰おう…」

仮面の男は剣を納めてもう片方の剣を抜いた。二人はその剣に見覚えがあった。